
■出版社:朝日新聞出版
吉田修一の「悪人」です。本作は凄いです。近年稀に見る大傑作です。本書を読まずして何を読むのですか、あなたたちは、と声を大にして言いたい。それほどの名著です。
何故本書は傑作なのか。それは人間を描ききっているからです。人間というより、現代の日本人と言ったら良いのか。本書に描かれている登場人物は、全ての日本人になんらか似ている。つまり、本書の中に読者は自分を見出すのである。それはつらい経験です。なぜなら登場人物はみんな「悪」の側面を見せるからである。その「悪」は誰しもが経験のある「悪」なのである。それはつまり自分の中の「悪」を見つめることである。自分を見つめる行為は結構つらい。でも目を背けてはいけない。自分の「悪」と正面きって対峙しなければならない。そうすることで、自分を再度見つめなおせる。ポンコツの宗教書なんか読むより、ずっと救われる読書経験になるはずです。自分を知ることは、自分の「悪」を知ることであるからです。その悪を認識するだけで、きっと救われるはずです。
本書のタイトル「悪人」は、作中の登場人物を指していると思っていましたが、きっと読者自身のことを指しているのだと確信を持ちました。
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